2026年3月18日
癌末期のおひとりさま患者様との、忘れられない最後の場面のお話です。
このブログにこのエピソードを綴るのは、お一人で寂しく最期を迎える方を一人でも少なくしたいという、切実な願いがあるからです。
私たちが取り組む活動の価値を、少しでも知っていただければ幸いです。
■不安のなかでの出会い
彼女との出会いは、緩和ケア病棟のある病院へ転院する前に入院されていた病院でした。
退院支援看護師の方からご相談をいただいたのがきっかけです。
ご両親は遠方でご高齢、妹様とも疎遠であることから、「自分が亡くなった後、納骨を含めた死後対応をしてくれる人がいない」と悩まれていました。
また、転院先で求められる「緊急連絡先」や「身元保証人」がいないことも、大きな不安の種となっていました。
初めてお会いしてお話を伺い、不安を解消するための具体的な手段を提案したところ、「ぜひその方向でお願いしたい」とのお返事をいただきました。
そこから、ご本人に最適な身元保証会社の紹介、そして公正証書による「遺言」と「死後事務委任契約」の作成を急ピッチで進めることとなりました。
■残された時間との闘い
主治医から伝えられていた余命や体調を考慮すると、一刻の猶予もありませんでした。
専門家や公証人の方々にも多大なるご協力をいただき、面談からわずか3日後には、公正証書の作成と身元保証契約をすべて完了。
無事に緩和ケア病棟のある病院へと転院することができたのです。
転院先の病院は、日頃から連携させていただいている馴染みの深い病院でした。
ちょうど時期が年末だったこともあり、ご挨拶を兼ねて彼女のもとを訪ねることにしました。
■突然の訪問と、彼女の気遣い
約束せずに伺ったため、彼女はとても驚かれた様子でした。
「ちょっと待ってて」と言われ、私は病室の外で待機することに。
今振り返れば、体調も優れないなか、女性に対して事前の連絡なく突然伺ってしまったことは、配慮に欠ける失礼な振る舞いだったと反省しております。
しかし、身なりを整えて「どうぞ」と招き入れてくれた彼女は、とても嬉しそうな笑顔で迎えてくださいました。
「目を閉じたらもう二度と開かないのではないか…。そんな日々の不安のなかで、こうして時間を取って会いに来てくれて、本当にありがとう」
そう仰って、これまでの人生のこと、そして大切にされてきた想いを、惜しみなく語ってくださいました。
■忘れられない、最後の手の温もり
時間はあっという間に過ぎ、お別れの時がやってきました。
ベッドに横たわっていた彼女が、そっと私に手を差し伸べてくれました。
「握手して」
その握手は驚くほど力強く、そして温かなものでした。
彼女のこれまでの歩みと、私たちへの信頼、そして未来への託し。
さまざまな想いが凝縮されたその感触は、今も私の手に残っています。
残念ながら、それが彼女との最後のお別れとなってしまいました。
しかし、あの瞬間の心の交流が、彼女の最期の安らぎに少しでも繋がっていたと信じています。
彼女から教えていただいた多くの教訓に深く感謝し、心よりご冥福をお祈りいたします。
私たちはこれからも、こうした「心の通った支援」を愚直に続けてまいります。
継ぐサポ
