2023年1月20日
私たちがサポートしているご家族で、お母様と息子さんの二人暮らしの方がいらっしゃいます。
お母様は90代で、息子さんは60代半ば。
私たちが関わったきっかけは、お母様の介護施設を紹介した会社からの相談でした。
「お母様の施設は探したが、これからのお二人が心配だ」と。
息子さんにお会いして話を聞くと、「自分は癌による余命宣告を受けていて、在宅で母の介護をしてきたが、いつどうなるかわからないので施設を探してもらった」とのこと。
息子さんは、自分の預金をお母様の施設入居の頭金に使い、毎月かかる費用は、お母様の年金で賄えるようにしていました。
「これから自分の病との闘いで母に心配をかけたくない」との思いから、ご自身の入院時に、母ではなく別の身元保証人が必要だと感じ、私たちが関わることになりました。
9月初旬に契約し、サポートをしていましたが、9月末、連絡しても折り返しのない日がありました。9時、10時と連絡しても折り返しがなく、ご自宅に向かおうとしたときにようやく連絡がありました。
「急に体調がすぐれなくなり、急遽病院に行き、明日から入院することになりました」と。
病院に直ぐに駆け付け、入院手続きをすませ、ご本人に会いに行きました。
2週間前お会いした時とはまったく異なる状況で、本人もつらそうでした。
「私が死んだ後の母が心配。母もサポートしてほしい。」
ご本人の要望から、お母様の施設に連絡を取り、お母様の身元保証人を息子さんから私たちに切り替えました。
また「遺言を遺して、自分の財産が速やかに母に届くようにしたい。高齢の母に、自分の死後の手続きはできないので全てお願いしたい」と息子さんがおっしゃったので、私たちは急いで、公証人の手配をし、遺言作成と死後事務委任契約を進めました。
10月中旬、入院先の病院に公証人と向かいました。ご本人はさらに体調が悪化してつらそうでしたが、お母様への想いから、転倒しそうになりながらも公正証書を遺すことができました。
その後、入院先の病院から緩和ケア病棟のある病院に転院するため、転院先のソーシャルワーカーと打合せし、手続きを行いました。
しかし残念ながら、息子さんは11月中旬、ご逝去されました。
私たちは病院に行き、葬儀社の手配をし、お母様の施設に向かいました。
お母様は涙ながらに、
「息子は幸せだったと思うよ。最後あなた方が近くにいてくれたから。」と話してくださいました。
ご葬儀については、高齢で体調もすぐれないため参列も難しく、息子さんの最期を私たちに託されました。
私たちは棺の中に、生前ご本人が大切にしていた物や思い出を入れたいと思い、お母様にご自宅の鍵を借りて探しに行きました。
生前もご自宅で面談していましたが、ご本人の寝室には初めて入りました。
ベットの枕元には、昔の家族写真や、好きなアーティストの写真、そして癌の治療方法に関する本がありました。
「どうにか治したい」と最後まで闘ったと思うと、胸が熱くなりました。
ご葬儀当日、私たちは、家族写真のカラーコピーとアーティストの写真を棺の中に入れて見送りました。ご本人は穏やかな顔をされていたと思います。
これから私たちは、息子さんの代わりにしっかりお母様をサポートしていきます。
お母様をサポートすることが、息子さんの想いを叶えることになるからです。
継ぐサポ 信夫